睡眠不足が続くと日中のパフォーマンスが低下して、仕事や家事、更には自身の体調にも様々な影響が出てきます。睡眠不足の解消には、どのような対策を行うのが良いのでしょうか。
一時的な睡眠不足であれば、セルフケアでも十分に改善が期待できます。
この記事では、すぐに始められる睡眠不足を解消するためのセルフケアをご紹介します。
ぜひ、この機会に正しい知識を身につけ、睡眠不足解消に役立ててください。
睡眠不足を解消することはできるの?
「いつもより睡眠時間が取れなかった」、「眠りが浅くて寝た気がしない」など、一時的な健康な人でも誰にでも起きる事象です。しかし、それが1ヶ月以上つづく場合には、不眠症が疑われます。もし不眠症であれば疾患になるため、医療機関での診察および治療を受けることがまず第一になります。
他方で、不眠症とまではいかない一時的な睡眠不足であれば、いくつかのセルフケアでも改善する可能性は十分にあります。また、不眠症と診断されたとしても、その治療と並行してセルフケアを取り入れることでより改善しやすくなります。
そもそも、なぜ睡眠不足になるの?
われわれ人間にはもともと「夜になると眠り、朝になると目が醒める」という睡眠と覚醒のリズムが備わっています。本来は夜になると自然と脳や体は休息モードに切り替わるようになっています。
しかし、疲労やストレスなどがあることで、脳や体が緊張状態のままになり、なかなか休息モードに切り替わらずに睡眠のリズムが乱れてしまいます。
例えば、睡眠にも「レム睡眠」「ノンレム睡眠」があります。
ノンレム睡眠の時間帯は、脳の疲労をとる時間で、レム睡眠は脳が動いている状態で筋肉を緩めて体を休める時間です。
睡眠不足の場合には最初のノンレム睡眠が長くなる傾向があります。また、睡眠の質が低下すると、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスが乱れ、自律神経のバランスも乱れることで、中途覚醒や入眠障害などの睡眠の質がますます悪くなるスパイラルに陥り、睡眠不足が慢性的に続くということも少なくありません。
睡眠不足を解消する大事なポイントとは?
では、睡眠不足を感じた時にはどうすれば良いのでしょうか?もちろん、翌日にぐっすり眠れれば良いのですが、自分の思う通りに眠りをコントロールするのは難しいのも事実。
睡眠を直接コントロールするというよりも、ポイントは自律神経のうち、副交感神経を優位にするセルフケアを取り入れることです。
次に、睡眠不足を解消するために押さえておきたいポイントをご紹介します。
睡眠不足を解消するセルフケアその①『運動やストレッチ』
まず1つ目のおすすめは、運動やストレッチです。不眠を改善するためには、日中に運動などを行うことでほどよく疲労し、脳や体が休息を求める状態にしておくことです。適度な運動などを行って適度に疲労することで、睡眠と覚醒のリズムにメリハリが生まれ、質の良い睡眠につながりやすくなります。
ウォーキング
具体的におすすめの運動はウォーキングです。運動習慣や体力のない人でも簡単にできることに加えて、ウォーキングのような反復運動はセロトニンと呼ばれる神経伝達物質の分泌を促します。セロトニンは、眠気を引き起こすメラトニンの原料になる成分です。特に朝日など日中に日光を浴びることでセロトニンの生成が活発になります。日中にセロトニンを十分に生成して、メラトニンの夜間分泌量が増えると睡眠リズムが整いやすくなります。
ウォーキングの時間としては30分程度歩き、軽く汗ばむくらいで十分です。腹式呼吸を意識してウォーキングすることで、さらにセロトニンの分泌が増えます。ウォーキングであれば、ジムなどに通う必要もなく、特別な準備も必要ないので、1つ前の駅で下車して歩く程度で簡単に取り入れられます。
ストレッチ
ストレッチも睡眠不足解消に効果的な運動です。家の中で特に道具がなくても始められる運動で、暑い夏や雨の日でも天候に左右されずに行うことができます。ゆったりとした気持ちで、少しだけ負荷がかかると感じる程度のストレッチを行うのがおすすめです。
以上のように、手軽に始められる軽い運動でも十分に効果が期待できます。
逆に、夜間にスポーツジムで激しい運動をしてしまうと、交感神経を活発にして心身が興奮状態になるので眠りが浅くなったり、寝つけなったりすることも。自身のペースで、適度な疲労感を感じる運動を取り入れてみてください。
睡眠不足を解消するセルフケアその②『食事習慣』
睡眠不足解消には、食事の見直しも実は欠かせません。
関係が内容に見えますが、食事によって睡眠が妨げられていることも多いのです。
例えば、夜寝る前の暴飲暴食や脂っこいもののとり過ぎなどが原因ということも。
まずは、できるだけ1日3食、毎日同じ時間に食べることを心がけましょう。
毎日決まった時間に食事をとることで体内時計が整い、睡眠と覚醒のリズムにメリハリがついて質の良い睡眠につながります。また、食べ物を分解・消化する体内の消化酵素の働きも、体内時計によって調整されています。毎日一定の時間に食事をすることで、消化活動が整うので食事の消化もよくなります。
特に夕食を見直すことが大切です。最低でも寝る3時間前には夕食を終えるのが理想です。胃の中に食べ物がまだある状態では、寝つきが悪くなり、睡眠の質が低くなることもあります。
なるべく夕食は消化に良いものを選んで、脂っこいものや辛過ぎるものなどは避けることも大切です。食事の量と質を見直して、体の内側から睡眠不足の解消を目指しましょう。
アルコールやカフェインは睡眠不足解消にはマイナス?
アルコールとカフェインの摂取にも気をつけましょう。アルコールは心身の緊張をほぐし、リラックスさせる効果があり、寝酒が習慣という方も多いですが実は逆効果なのです。アルコールには摂取後数時間経つと眠りを浅くする作用があり、利尿作用もあるため寝ている間に尿意で目が覚めてしまう可能性もあります。
また、コーヒーに含まれているカフェインも夜間の摂取は控えたい成分です。カフェインには覚醒作用があるため、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなる要因の一つです。カフェインは摂取後30分程度で作用が出始めて3〜4時間持続するため、寝る4時間までの摂取を心がけると良いでしょう。どうしても夜にカフェで一服したいという時は、カフェインフリーやデカフェを選ぶことをおすすめします。
睡眠不足を解消するセルフケアその③『睡眠環境づくり』
睡眠不足を解消するためのセルフケアとしては、睡眠環境づくりも大切です。
代表的な睡眠環境としては下記が挙げられます。食事の改善や運動は難しいという方も、物理的に環境を変えていくだけなので難しくないはずです。
- 寝室の明るさと温度
- 快適な寝具
- 正しい姿勢
- その他(アロマテラピーや音楽)
①寝室の明るさ・温度・湿度
寝室の明るさについては、「おぼろげに物が見える程度(20〜30ルクス)」が目安になります。強い光が入らない状態でカーテンや照明などを調整してみましょう。明るさの好みには個人差があるので、自身の寝やすい明るさに合わせてください。
また、室温は快適な睡眠につながりやすい温度である夏25℃前後、冬20℃前後、寝床内(布団の中)は30℃前後に保ちましょう。また、湿度もコントロールできるのであれば、50%前後が理想的です。エアコンや加湿器などで調整しましょう。
②快適な寝具
寝具には、枕、マットレス、敷布団があり、それぞれに適切な寝具選びが必要です。
特に眠りに影響しやすいのは枕で、高さと幅がポイントになります。枕が高すぎると、気道が圧迫され、眠りが浅くなってしまいます。以下のように、寝方に応じた枕選びをしましょう。
仰向け | 頸椎から肩にかけてS字のカーブが維持できる枕 |
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横向き | 頭から背骨にかけてまっすぐな姿勢を維持できる枕 |
また、枕の横幅は、頭3個ほどの幅のものが、寝返りも打ちやすく理想的です。
次に、マットレスと敷布団については、柔らかすぎないものが理想です。柔らかすぎると体が沈み込み、寝返りが打ちにくくなります。寝返りが打てないと、交感神経が優位になり、中途覚醒が起きやすくなってしまいます。逆に硬すぎも体が痛くなり、寝心地が悪くなるので適度な硬さを選びましょう。
③正しい姿勢
寝つきを良くするためには、自律神経のうちリラックスにつながる副交感神経を優位にする必要があります。寝てる間に体の一部が圧迫されていると、交感神経の緊張に繋がり、眠りが浅くなる可能性があります。さらに圧迫によって、血行が悪くなると体から熱を放出できないため体温が下がらず、寝つきが悪くなる可能性があります。
体を余計に圧迫しないためにも、仰向けの姿勢で寝るのがおすすめです。また、手足も大の字に広げて寝ることで、体にも熱がこもらず、体温も自然と下がりやすくなります。
④その他(アロマテラピーや音楽)
上記の①から③が基本的な対策になりますが、加えるとすればアロマテラピーや音楽などのアプローチも有効です。
アロマテラピーは香りによってダイレクトに脳に作用して、リラックスや入眠へと誘う効果があります。アロマディヒューザーなどで寝る前に香りを楽しみながらリラックスしましょう。
睡眠不足解消には以下のような香りがおすすめです。
ラベンダー | 甘く、心安らぐ香りで、心身をリラックス |
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カモミール | 不安、怒り、緊張などを鎮静 |
ネロリ | 興奮状態を鎮める |
ゼラニウム | ストレスや不安を緩和 |
マジョラム | 精神を鎮めてストレスを緩和 |
また、音楽など耳からのアプローチもおすすめです。
おすすめの音楽ジャンルは、α(アルファ)ミュージックとヒーリングミュージックです。どちらも脳がリラックスできる音楽であり、α波が出ることによってリラックス効果が生まれます。雨の音など音楽ではないタイプがよく眠れるという方もいます。
ただし、リラックスできるような音楽であることが大切です。気分が高揚・興奮するような音楽は逆効果になります。最近ではスマホアプリで簡単にヒーリング音楽を楽しめるので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?
睡眠不足はセルフケアから解消を目指そう
睡眠不足の解消について、この記事ではご紹介しました。一時的な睡眠不足であれば、まずはセルフケアでご自身の中で出来ることから始めてみてください。一度に全部を取り入れようと無理するのではなく、手が届く範囲から少しずつ試してみることでも十分です。
ただし、セルフケアでは改善できない場合や、慢性的に睡眠不足が続く場合には、医師による専門的な治療が必要な可能性があります。長く続く場合には一度病院に相談してみましょう。
睡眠不足が続くと心も体にも大きな負担になります。ぜひ、この機会にセルフケアを取り入れて、睡眠不足に悩まない快適な毎日を目指していきましょう。