睡眠不足で翌日に吐き気に襲われた‥という経験はありませんか?睡眠不足ではさまざまな症状が引き起こされますが、吐き気もその1つ。睡眠不足によって胃腸の機能にトラブルが起きることは吐き気以外にも考えられます。
そこで、今回は睡眠不足によって吐き気が起きるメカニズムと対策&改善方法も合わせてご紹介します。ぜひ、睡眠不足による吐き気に悩んでいる方は最後まで読み進めてください。
睡眠不足でなぜ吐き気が起きるの?
吐き気と睡眠不足は一見関係がないようですが、実は関係があります。
そのメカニズムについてまずはご説明していきます。
自律神経の乱れによる4つのメカニズム
吐き気は私たち人間が異物を吐き出す反応として備わっているもので、食中毒や食あたりが原因のことが多いです。では、睡眠不足でなぜ吐き気が起きるのでしょうか。
まず考えられるのは、睡眠不足による自律神経の乱れです。自律神経は、体内のさまざまな機能を無意識に調節する神経であり、呼吸や体温調節だけではなく胃腸での消化活動も司っています。そのため、睡眠不足になると、この自律神経のバランスが崩れた結果、次のようなメカニズムで吐き気を引き起こします。
- 消化機能の低下
- ストレス
- ホルモンバランスの乱れ
- 免疫機能の低下
①副交感神経の乱れによる消化機能の低下
自律神経が乱れることによって、胃腸の働きが低下することが理由の一つです。自律神経のうち副交感神経は胃腸での消化活動を活発にする働きがあります。睡眠時・リラックス時に優位になる神経です。しかし、睡眠不足の場合には、副交感神経の働きが低下して代わりに交感神経優位となり消化活動が停滞しやすくなります。その結果、消化不良や胃の不快感が引き起こされて、吐き気が生じるというメカニズムです。
②ストレスによる交感神経優位
睡眠不足は体にとって大きなストレスになります。人間の3大欲求のうち最も優先される「睡眠欲」が満たされないということは、身体的にも精神的にも大きなストレスになるのです。ストレスを感じると体が緊張して交感神経の活動が優位になります。交感神経が過度に優位となると、心拍数や血圧の上昇とともに吐き気やめまいなどの症状を引き起こす可能性があります。また胃腸機能が低下して吐き気を起こすことも考えられます。
③ホルモンバランスの乱れ
睡眠不足によってホルモンの分泌と調節に異常が起きる場合があり、中でもストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加する可能性があります。過剰なコルチゾールは胃酸の分泌を増加させて、胃の不快感や吐き気、胸焼けなどを引き起こします。
また、コルチゾールはストレス下において分泌が過剰になるため、睡眠不足によるストレスによっても影響を受けると考えられます。
④認知機能や不安感の増加
睡眠不足によって認知機能が低下、感情が乱れやすくなることで、不安感やストレスが増加して吐き気が起きることもあります。もともと不安になりやすい方は、特に睡眠不足によるメンタルバランスが原因かもしれません。
⑤免疫機能の低下による間接的な影響
慢性的な睡眠不足は免疫機能も低下させてしまう可能性があります。免疫機能の低下が直接吐き気を引き起こすわけではありませんが、細菌やウイルス感染などによる食あたり等が起きれば、間接的な原因となって吐き気につながる可能性はあります。短期的な原因としては考えにくいですが、睡眠不足が長く慢性的に続いている場合には、免疫低下による体調変化にも注意が必要です。
睡眠不足による吐き気の応急処置と予防対策
睡眠不足、寝不足で吐き気が起きたとき、すぐに病院へ行けるという状況であれば良いですが、まずはセルフケアで対処することも方法の一つです。まず仮眠を取るのが一番ですが、仕事中や予定がありすぐに眠ることも難しいとき、応急処置に何をすれば良いでしょうか。
①水や牛乳で緩和
まず、吐き気が起きてしまったら応急処置をしましょう。吐き気が起きている際には交感神経が高ぶっており胃酸が多く分泌されています。まずは胃酸を薄めるために水を飲みましょう。また、胃や食道の粘膜を守るために、牛乳を飲むのも効果的です。
②食事内容に気をつける
吐き気があって胃腸が重い場合には、消化に良い食べ物を食べるようにしましょう。なるべく、胃に負担をかけないように少量ずつ摂取しましょう。
日頃から就寝前などの食事はせず、就寝前の2〜3時間前までには食事は済ませましょう。
③嗜好品の摂取を控える
お酒やタバコなどは血流を上げて胃腸の分泌を活発にしてしまいます。吐き気がある時は、お酒やタバコは控えましょう。また、カフェインの入ったコーヒーやお茶も胃酸の分泌を活発にするので、吐き気がある時は控えてください。ノンカフェインのほうじ茶など、胃腸にやさしい飲み物を選ぶことがポイントです。
④仮眠をとる
仕事が忙しいなどの理由で夜にしっかりと睡眠をとれないのであれば、昼間の時間でよいので30分程度仮眠をとるようにしましょう。少し仮眠をとるだけで、眠気や疲労が軽減され、吐き気も改善される可能性があります。ただし、長い仮眠は逆に夜の睡眠の妨げとなる恐れがあります。仮眠はあくまでも短時間で適度に留めることが大切です。
⑤睡眠時間を確保する
予防そして改善のためには、睡眠を確保することが外せません。根本的な原因である睡眠不足を解消しましょう。
まず1つ目は、毎日同じ時間に寝て起きる習慣を作ることです。これにより体内時計を整え ることができます。その他、寝る1時間前くらいに軽めのストレッチなどをして、心と体を落ち着かせるのもおすすめです。また、快適なマットレスや枕を選んだり、寝室の温度や照明なども自分好みに設定するのも快適な睡眠環境には大切です。
逆に睡眠を妨げる可能性がある要素にも気を付けなければなりません。アルコールやカフェインは睡眠の質を下げてしまう可能性があるので、摂取量やタイミングは気をつけましょう。
⑥状が改善しない時は医師に相談
吐き気が何日もおさまらない場合には、ここに挙げた対策を無闇に続けるのではなく、早めに医師に相談してください。もし睡眠不足が原因なのであれば、根本的に睡眠不足を改善する必要があります。不眠症であれば専門的な治療を受けることも必要です。
また、他の危険な病気が隠れている可能性もあるため、長く続く場合には自己判断で睡眠不足が原因と判断することは危険です。吐き気が改善しない場合には早めに医師へご相談ください。
病気が隠れている可能性もある
ここまで解説してきたように、睡眠不足による自律神経の乱れが吐き気の原因である可能性がありますが、他にも吐き気にはさまざまな原因が考えられます。とくに吐き気は危険な病気の初期症状であることもあるため、サインを見逃さないことが大切です。
①脳の病気(脳梗塞・くも膜下出血など)
最も危険と言えるのは脳の病気です。脳の病気には、脳梗塞、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、脳炎などが挙げられます。症状の一つとして吐き気が起きることが特徴で、合わせて頭痛やめまいなども同時に発生することも多いです。
脳の病気であるかどうかの判断の1つとして、吐き気が急激に発生しているかどうかが判断材料の一つとなります。また、今まで経験したことがないくらい強い頭の痛みであれば、脳疾患などの他の病気が隠れている可能性が高いです。できる限り早く病院を受診することをおすすめします。他にも呂律が回らない、めまいがするなど、普段と違う症状があれば、睡眠不足以外の原因を疑って、早めに受診するようにしましょう。
②メニエール病など目眩による吐き気
メニエール病などの耳の病気が原因によって、吐き気が生じる場合もあります。耳には三半規管という、身体のバランスを保つ機能があり、それが崩れるとめまいが生じます。この三半規管は、睡眠不足によっても影響を受けやすいですが、耳の病気が原因という可能性も考えられます。その他にも、感染によって起きる内耳炎でも、めまいとともに吐き気が生じることもあります。もし、目眩の症状が強い場合には早めに内科や耳鼻科に相談しましょう。
③その他の病気(消化器系・感染症など)
消化器系の病気である胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、腸閉塞や、ウイルス感染による胃腸炎、食中毒なども、吐き気を引き起こします。起きた時に症状を感じることが多いため、睡眠不足が原因と間違うこともあります。
睡眠不足による吐き気は眠りの見直しから
睡眠不足と吐き気には、実は思っている以上に深い繋がりがあることがご理解頂けたのではないかと思います。万が一の場合には応急処置で対処しつつも、根本的な睡眠の見直しによって対策を行うようにしてください。吐き気があるときは安静が第一ですが、回復後には日常生活、習慣を見直して快適な毎日を目指していきましょう。
また、吐き気は様々な病気の兆候として起きる症状で、睡眠不足が原因と必ずしも断定できるものではありません。他の症状が出ている場合や長引く場合には、早めに医師に相談することが大切です。