血圧が上がる原因としては動脈硬化やストレス、塩分の過剰摂取、肥満などが知られていますが、実は睡眠不足も甘く見てはいけない原因の一つです。睡眠不足を放置してしまうと高血圧になり、結果的にさまざまな生活習慣病に繋がる可能性もあります。
でも、なぜ睡眠不足によって血圧が上がってしまうのでしょうか?この記事では、血圧と睡眠不足、睡眠不足による高血圧を防ぐ方法についてもご紹介します。ぜひ、最近眠れない日が続いている方、高血圧と睡眠不足が気になる方は最後まで読み進めてください。
血圧と睡眠不足の関係は?
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たかが睡眠不足と考える方も多いですが、実は睡眠不足が慢性的に続くことで様々な疾患に繋がることが分かってきています。その中でも、高血圧はそのものの怖さ以上に、脳血管疾患、心臓疾患などにも繋がる怖い生活習慣病の一つ。正しく対処するためにも、睡眠不足と血圧の関係について理解を深めましょう。
事実、睡眠不足は血圧と関係している
高血圧のリスクは、短時間睡眠にのみ報告があり、具体的に臨床的な研究がされています。
アメリカ・シカゴ大学保健学部の研究者は、「十分な睡眠をとっていない中高年では高血圧になる可能性が高い」と報告しています。睡眠時間が短いグループほど高血圧になる割合が高く、睡眠時間6時間と5時間のグループを比較したところ、5時間のグループの方が高血圧になる割合が37%も高かったといいます。
通常、睡眠時には自律神経のうち副交感神経が活発になり、交感神経の活動が抑えられます。交感神経は興奮時・攻撃時に活発になる神経であり血圧を上げますが、副交感神経は逆に安静時に優位になり血圧を下げる働きを持っています。そのため、睡眠中は副交感神経優位により血圧が下がります。しかし、短時間睡眠では交感神経が活動して興奮した状態が続き、血圧を下げる機能が働かずに血圧が上がりやすくなります。これが、睡眠不足と血圧が関係している理由です。
睡眠不足による高血圧が生活習慣病リスクにも
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高血圧はそれ自体よりも、高血圧によってその結果脳血管疾患の要因となり、最終的には命にも繋がる問題となることが怖いところです。睡眠時間が5時間以下になると脳血管疾患の一つである、脳卒中のリスクが高くなるという報告もあります。
また、他方では睡眠不足が長すぎても脳卒中リスクが高まるという報告もあり、短すぎても長すぎても脳卒中のリスクは高まると言われています。
他にも、高血圧によって以下のような生活習慣病にかかりやすくなる恐れがあります。
- 心臓病
- 脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)
- 腎臓病
- 眼底出血などの視覚障害
睡眠不足と血圧の両方に関係する睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、大きないびきや睡眠中に繰り返し呼吸が止まる病気です。実は、睡眠不足の原因にもなります。気道が塞がって呼吸が十分にできなくなることで眠りが浅くなり、寝ているつもりでも十分に睡眠が取れていないため日中に急激に眠気に襲われることもあります。
実は、睡眠時無呼吸症候群は血圧の上昇にも関係しています。睡眠中に酸素不足となることで、酸素を供給しようとして交感神経の働きが過剰になり、血圧が上昇してしまうのです。睡眠を取っているつもりでも日中に眠気が強い、血圧も高めという場合には、一度病院で検査を受けて調べてみることをおすすめします。
こんな方は睡眠不足と血圧管理を見直そう
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睡眠不足は高血圧につながり、結果的には生活習慣病など命にも関わる病気へと発展することもあります。しかし、睡眠不足の自覚がないという方も多く、血圧を測るまでは高血圧は特に自覚症状が出にくいため気づけないことも。
血圧と睡眠不足についてリスクを抱えているのは次に挙げるような方が考えられます。もし、当てはまる場合には、一度ご自身の睡眠の状態と血圧についても調べてみることをおすすめします。
ストレスが多い人
日常生活や仕事でストレスを抱えている人は、血圧が上がりやすく、交感神経優位により睡眠不足にも陥りやすいので注意が必要です。
運動不足、肥満気味
運動は血圧を下げる効果があります。また、運動により適度に疲労することで、睡眠が促されますが、デスクワーク中心で運動量が少ない方は睡眠の質が低下しやすくなります。また、肥満も血圧を上げる要因の一つです。
高齢者
年齢が上がるにつれて血圧は高くなる傾向があります。また、高齢者では睡眠のリズムが乱れやすくなり、早朝に起床してしまう場合もあれば、夜間に何度も起きてしまう場合もあります。
更年期の女性
更年期に入るとエストロゲンが低下して、血圧が高くなりやすくなります。また、ホットフラッシュや発汗などの体調変化によって、睡眠のトラブルを抱えることもあります。
睡眠を見直して血圧をコントロールしよう
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健康診断などで血圧が高めと指摘された場合には、まず食事の見直し、運動などが基本的な対策になります。他にも減塩やダイエットなどに取り組む方も多いと思いますが、「睡眠の見直し」も合わせて取り組むことが大切です。
①良質な睡眠で睡眠不足を改善する
睡眠をとることで休息をとり、血圧を下げることで、一日の疲労を回復することができます。逆に、睡眠不足の状態が長く続くと血圧が上がりやすい状態となってしまいます。
まずは、睡眠時間を十分にとり、睡眠の質を改善するために、日々の睡眠習慣を見直しましょう。夜更かしや寝る直前までスマホを見るなど、睡眠に悪影響を与える習慣はしていませんか?また、寝具や照明など環境を整備することも大切です。
次に挙げる方法は、睡眠を改善するための基本です。まずは、自宅で簡単にできることから取り入れてみましょう。
- 規則正しい生活を心がける
- 寝る前にリラックスして過ごす(スマホやPCを遅くまで見ない等)
- 毎日同じ時間に起きて、カーテンを開けて太陽の光を浴びる
- 就寝2時間前を目安にぬるめの温度で入浴
- 昼寝をとりすぎない、午後3時までに20~30分程に留める
- カフェイン摂取は夕方18時ごろまで
②睡眠のプロに相談してみる
睡眠不足をセルフケアで改善しようと思っても、なかなか正しい方法がわからない、自分にあった方法が見つからないということも多いはずです。最近では、睡眠に特化した「睡眠サロン」という新しいサービスも始まっています。
睡眠サロンでは、その施設で快適な睡眠を提供してくれるだけでなく、個人では解決できない睡眠にまつわるトラブルにアドバイスしてくれることも。より良い睡眠を目指したい方、将来の健康のために睡眠を見直したい方は、一度睡眠のプロに相談してみるのも良いでしょう。
③精神的な不眠、慢性的な睡眠不足は医師に相談
睡眠不足が何日も続く、不安で眠れないなど精神的な問題も抱えている場合では、セルフケアでは対処しきれないことも。長引く睡眠不足を放置していると「睡眠負債」となって、冒頭で説明したような高血圧、さらには生活習慣病につながることもあります。
不眠が改善しない場合は放置せずに、早めに医師に相談しましょう。睡眠については、一般内科、心療内科、精神科などで相談が可能です。もし、高血圧と睡眠のトラブル両方であれば、内科などに一度相談してみましょう。また、近年は睡眠に特化したクリニックや病院も増えているので、睡眠外来などに相談することもおすすめです。
血圧対策には睡眠不足の改善が大切
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この記事では、血圧と睡眠不足の関係について説明しました。「されど睡眠不足」と思って侮っていると、高血圧から様々な怖い疾患に繋がる可能性もあります。もし、高血圧を医師から指摘された、健康診断で血圧高めと言われたという方は、食事と運動に加えて、睡眠の見直しも取り入れてみてください。睡眠の改善は、根本的な血圧の是正に繋がるだけでなく、将来の健康にとっても大きな一歩になるはずです。